出会いも別れもある日突然に

仕事の行き帰りで毎日使うターミナル駅。
そこは都市部では珍しくもない、アパレルショップの立ち並ぶ地下街で、普段なら気にも留めずに通り過ぎる、他の店と特に異なる特徴をもつわけでもない、ごくごく普通の服飾系の店でした。

仕事帰りの重たい鞄を下げながらふらっと入ったその店で、私に最初に声をかけてきたのが彼女だったのです。

細身の長身でその店の服を上手に着こなす、ザ、アパレル店員といった風貌の彼女でしたが、
ショップ店員特有の馴れ馴れしさや押し付けがましいところが全くなく、私の気に留めたパンツと、それに合う靴をさりげなく持ってきて、試着させてくれました。

私はパンツよりも靴を気に入ってしまい、
「パンツ買わなくても、靴が欲しい!」
と試着室から出て思わず言ってしまいました。

そんな私を見て、彼女は子供のように素直な表情で笑い
「これ、実はきょう再入荷したばかりの人気商品なんですよ」
とさりげなく購買意欲を刺激しました。

このとき、試着前にその情報を知らされて、絶対にこのパンツと合うと思いますよ、なんて強引に進められていたら恐らく私はパンツも靴も買わなかったでしょう。

それが彼女との出会いでした。

それから何度もその店に通い、彼女がいない日はなんとなく購買意欲がわかず、いつしか彼女と話すだけの日さえもできるようになりました。

しかし、ブランド終了と共に彼女もショップも私の前から消えてしまったのです。

突然の素敵な出会い、そして突然の別れでした。
出会いを大切にして、会える今を大切にしようと思いました。